ベーシック・インカムとは何か

トニー・フィッツパトリック『自由と保障 ― ベーシック・インカム論争』
∟ 第3章 ベーシック・インカムの原理

3.1 はじめに

3.2 ベーシック・インカムとは何か
・ ベーシック・インカムの定義が曖昧であり、擁護に就いての選択肢が多すぎる…という問題に直面。

・ 最低所得保障構想
給付の保険/扶助モデルを根本的に改革するか全廃することによって、条件付きか無条件かを問わず、全員ないし一部の市民に対して、最低水準の所得を国家が保障するための提案。
・ ベーシック・インカム
各市民に定期的に無条件で支払われる保障された所得。無条件とは、労働上の地位、雇用の記録、労働意欲、婚姻上の地位とは関係ないことを意味する。完全BI、部分BI、過渡的BIが考えられる。
・ 社会配当、参加所得、負の所得税
BIのイデオロギー的変種。

3.3 いくらくらいかかるのか?
・ 社会保障費に、管理コストや奨学金総額、所得税の控除による歳入の減少分…などを加えると、かなりの額のBIとなる。
・ 以下の2点を考慮…
① 現在の政治的雰囲気は、支出を削減することを目標としている。
② 均一額の給付は所得保障の方法として効率的ではない。
・ 支出可能な所得は部分BIの水準。完全BIを維持するような課税は、ほとんど実現可能性がない。

3.4 ベーシック・インカム小史

① 1770年代から第1次世界大戦まで
② 戦間期
③ ケインズ・ベヴァリッジ時代
④ 現在

3.5 なぜいまなのか?

―過去に傍流に置かれてきたのはなぜか?
・ 「中範囲の効果」
それぞれの望ましい社会的目標を単独で見た時の効果は大きくないが、すべての範囲の目標を考慮した場合には、その効果が大きくなる。

―現在、なぜBIが注目されるようになったか?
・ 消極的な理由
21世紀の福祉国家を近代化する上で重要な福祉改革は、1つや2つの望ましい目標に限定された改革ではなく、すべての範囲にわたる改革である。過去における政策決定の無駄を暴露するから。
・ 積極的な理由
市民権の概念を完全な形で適用するものであるから。従来の保険と扶助の給付は、それぞれ貢献原理と必要原理によって組織されてきた。貢献原理には女性を差別する効果があり、必要原理には統制と監視のシステムを伴うものであった。

3.6 結論